韓国版『キャリア・アンカー』出版社に聞く、韓国のキャリア事情

キャリア・個人, 著作と関連書籍

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 白桃書房l9788999703447営業部の寺島は、去る10月、ソウル国際ブックフェアに合わせて、版権セールスで韓国を訪問しました。
 その際、2014年にCAREER ANCHORS third editionの韓国語版を出版されたHakjisaの担当編集者 Ms. Park Jiyounにお会いし、その出版の経緯や、韓国におけるキャリアの考え方、またその日韓比較などをインタビューしてきましたので、ご紹介します。

寺島:今日はお時間いただきありがとうございます。
 早速ですが、昨日、チョンガクにある書店のBandi and Lunis とYPBooksに行って、御社で刊行された韓国語版『キャリア・アンカー』の店頭在庫を探したところ、心理学の棚か、生涯教育の棚にあって少し意外に思いました。もともと御社が心理学中心の出版社だったということはあるのでしょうが。
 日本では、ビジネスの、人的資源管理の棚に置かれることが多いんですよ。

DSC_2015Ms.Park:私どもは、大学の先生から勧められて出版することにしたんです。今は、大学の選択科目の教科書として使われています。
 韓国では、給与や福利厚生、あるいは従業員を大事にするかどうかも、とても企業間で違っているので、みんな少しでも条件のよい仕事を、と思って、チャンスがあれば転職したいと思っています。それで、実のところ、「キャリア・アンカー」のような、自己実現のために仕事をする、という考え方はあまりしっくりしないという人が多いように感じています。
 大学の進学率も70%程度になるのですが(※日本では50%程度)、みんな、よい企業に入るためには、よい「スペック」(※採用選考上で明確なアドバンテージとなる能力や経験、資格)が必要と思っていて、よい大学に入ること、また、英語や他の資格などを取っていくこと、あるいは留学経験などがとても重要だと思っているんです。

寺島:なるほど、昨日は日曜日だったので、ハプチョンのブックカフェをいくつか回ったのですが、カップルで来ていても、みんな一心不乱に勉強していてびっくりしました。

Ms.Park:彼らは大学生か、「スペック」を強化して転職を目指している社会人でしょうね。
 日本ではどうなんですか?

寺島:私たちの国では、大学はレジャーランドだと言われた以前とは少し変わり、努力する人も増えたようですが、大学に入るとのんびりしてしまう人もまだまだ多いのが現状です。
 また、学校を卒業し、本来働き始めたはずの年齢になった後も、定職につくというより、「自分探し」と称してあえてアルバイトをして、アートらしき活動をする、という人も多いと言われています。だから、そのような人には『キャリア・アンカー』の考え方が誤解されがちで、社会へ貢献しつつ日銭を稼ぎながら、自分のやりたい仕事をし続けるという、本来あるべき、仕事へ生き生きと取り組む人材を育てることができないのではないかという問題意識が生まれています。
 そうそう、日本の厚生労働省は、21世紀に入った早々、キャリア教育が重要だということで、キャリア・カウンセラー制度を作るなど、さまざまなキャリアに関する施策を導入したんです。それもあって、私たちが2003年に出版した『キャリア・アンカー』は今だに売れ続けています。

Ms.Park:なるほど、それはうらやましいですね。
『キャリア・マネジメント 3冊セット』を改めて見て)、これは全部で7300円もするんですか!? 日本ではこんな価格でも販売できるんですねぇ。私たちの本はCAREER ANCHORS Third Editionの3冊セットを合冊にして出版しているのですが、15000ウォン(※およそ1500円程度)ですよ。
 社会的・経済的な事情もあるでしょうが、先ほどお話ししたように、人の働き方という点では韓国は少しゆとりや楽しさが十分でない面もあります。今後、キャッチアップ型の経済からイノベーションを生み出すような経済への転換が求められていますから、働くことが楽しくなるようなことが必要だと思うので、日本のような政府の後押しとかがあるといいなあと思います。DSC_2013
 あと、弊社の営業に、書店の人的資源管理の棚にも置かれるようなキャンペーンをしてもらわなくてはいけませんね。

寺島:今日はお忙しいところ、いろいろ教えていただきありがとうございました。
 弊社では日本人著者のキャリアの本も出していますので、もしキャリア教育・学習の環境が変わったらぜひ韓国語版の出版の検討をお願いします(笑)。

(2015年10月13日Hakjisa オフィスにて収録)

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