エドガー・シャインポータルサイト開設に寄せて 金井壽宏 神戸大学大学院経営学研究科教授

組織, 著名人が語る魅力

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 シャイン博士の日本の一番弟子であり、博士の『キャリア・アンカー』など複数の翻訳も手がけられた金井壽宏 神戸大学大学院経営学研究科教授から、ポータルサイト開設に寄せてメッセージを頂戴しました。
金井先生がマサチューセッツ工科大学に留学していた時のご様子に始まり、その後のシャイン博士との交流も語っていただいています。

エドガー・シャインポータルサイト開設に寄せて

 わたしは、1984年から1987年まで、米国マサチューセッツ州ケンブリッジにある、マサチューセッツ工科大学(MIT)に留学しておりました。MITは、サイエンスとエンジニアリングで名高い研究教育機関で、ボストンとケンブリッジの間を流れるチャールズ川沿いに、細長い三角形状に校舎が並んでいます。そのキャンパスの東側の端のほうに、MITスローン経営大学院があります。留学中はスローンの経営学博士課程に在籍し、OSG(Organization Study Group、組織研究グループ)に属しておりました。わたしがMITに提出した博士論文の論文指導教員は、ジョン・ヴァン−マーネン教授、ロッテ・ベイリン教授、エリノア・ウェストニー教授でしたが、論文審査の主査は、ヴァン−マーネン先生でした。組織エスノグラフィーで知られる組織社会学者です。

 在学中、最も印象深かった科目は、組織論のセミナーでシャイン先生が担当しておられたインタラクティブな学習の場でした。贅沢なことに、そのとき受講をしていたのは、組織行動(organizational behavior)を専攻する、わたしを含む同期の4名だけでした。第1回目のセッションで、こんな多様性に富む新入生は見たことがないと言われました。日系3世のアメリカ人で、イェール大学を出てカリフォルニア大学バークレイ校でJDの弁護士で日系3世のエレーン、アルゼンチン人の精神科医で家族、集団、組織にも興味をもつレジーナ、ソウル大学卒で、いきなり博士課程に入ってきたビジョンチオル、それからわたしトシ、といったメンバー構成でした。たしかに、こんな多様なPhDプログラム組織論分野の新入生はそういないかもしれません。

 このゼミの指導以外にも、MIT在学中には、論文指導教員の3先生と変わらぬ頻度で、研究上のアドバイスを受けてきました。
指導教員のヴァン−マーネン先生からは、組織社会学と組織エスノグラフィーを学びましたが、シャイン先生からは、組織心理学とプロセス・コンサルテーションを含む彼独自の実践的な方法にもふれさせてもらいました。指導の場そのものが、内容面でのコメントをされるコンテント・エクスパートと、わたしたちが研究を進めるプロセス状の課題(同期とのつながりにおけるグループ・プロセスも含め)にもしばしば言及されました。

 いちばん興味深く思ったのは、こちらが質問すると、「そのことを質問されるわけは?」とよく聞かれたことです。なにを求めるかを知らずに、相手に役立つやりとりはできないという考えからで、これは、最近の2冊の新著、『人を助けるとはどういうことか(原書名、Helping)』『問いかける技術(原書名、Humble Inquiry)』にもつながります。

DrKanai_DrSchein わたしのPhD論文指導・審査委員会には入っていただきませんでしたが、わたしはシャイン先生の直接的な弟子のひとりでもあるので、留学中だけでなく、それ以後もコンタクトが頻繁にあり幸せなことだと思っております。わたしが、日本からのミッション(使命を帯びた調査旅行)に日本の実務家や学会人に同行して渡米する際には、シャイン先生にお越しいただいて調査団一行に講話をしていただいたり、また、逆に、シャイン先生を日本に招いて、組織文化とリーダーシップ、組織開発なかでもプロセス・コンサルテーションについて、講話していただいたりしました。最近の訪米組織開発調査団(関西生産性本部)の訪米調査でも、パロアルトにシャイン先生を訪ねました。このときのフィールド調査は、『経営に資する強い組織を作る—日本流“組織開発”の推進のため、私たちは何をすべきか』(2013年12月)として同本部から出版されました。そのときの訪米調査団の同窓会はずっといまも続いています。

 このたび、『問いかける技術』が出版されるタイミングで、シャイン先生のポータルサイトが公開されましたことを喜んでおります。
わたしは、IT音痴なので、自らはうまく活用できないかもしれませんが、シャイン先生の組織心理学や組織開発等に関心をもたれる方々に有益な情報共有、アイデアの相互作用の場となりますように祈っております。

神戸大学大学院経営学研究科教授 金井壽宏

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